
# はじめに
 VMware vSphere環境ではTanzu Kubernetes Grid(通称: TKG)を使用することで簡単にKubernetes環境を構築することができます。本記事で紹介するTKGはStandalone版であり、マルチクラウドに対応可能なTKGmです。また、NSX ALBはEssentialsライセンスを使用していきます。<font color="red">本記事ではNSX ALBを構築する方法を記述しています。</font>
 
# 環境

| 環境                              |
| --------------------------------- |
| VMware ESXi 8                     |
| VMware vCenter 8                  |
| Tanzu Kubernetes Grid 2.1.1       |
| NSX Advanced Load Balancer 22.1.3 |
                                  
# 前提条件
- VMware ESXiの構築及びvCenterを使用してDatacenterの管理ができていること
- 2つ以上のVLAN環境が構築できていること
    - 本環境ではマネジメントネットワーク:VM Network(VLAN0)とKubernetes用ネットワーク:VLAN100(VLAN100)を用意しています。
- 十分なリソースのあるサーバ、ストレージ
    - NSX ALBでCPU:8, RAM:24GB, ROM:128GB使用します。
    - 要件によりますが、デプロイするKubernetesノードでもCPU:2, RAM:8GB, ROM:40GBの仮想マシンが4~12個デプロイされます。

# NSX ALBの構築
　ここからはNSX ALBのコントローラであるAvi Controllerの構築を行います。
 
## NSX ALBのダウンロード
- 下記サイトにアクセスしてください。
https://customerconnect.vmware.com/en/downloads/details?downloadGroup=NSX-ALB-10-NDC&productId=1092&rPId=55618#product_downloads

- 「Products & Downloads」の中にある「Download Now」ボタンをクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_e34d2aee3ab3fec0e7498ca196f8afc8.png)


- VMware Connectのアカウントでログインしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_07ccba701dee1031d8f2ce7dd92e995a.png)

- ログイン後、リダイレクトでAvi Networks Portalに飛びます。左ペインの「Software」→「NSX ALB」と進んでください。その後、「22.1.3」を開き、「22.1.3」のリンクをクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_c27d3cf30c89740b8eab054b5d85f5f5.png)

- 「Downloads」の中にある「VMware」タブを開き、「Controller OVA」のダウンロードボタン(下矢印)をクリックし、NSX ALBのOVAファイルをダウンロードしてください。
※この際、ダウンロードされるファイル名は「controller_sha1-22.1.3-9096.ova」

## NSX ALBのOVAのデプロイ
- VMware vCenterにアクセスし、ログインをしてください。

- Datacenterを右クリックし、「OVFテンプレートのデプロイ」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_6e8a98fc981625aea8ae8e2c4d226250.png)

- OVFテンプレートの選択ではローカルファイルを選択し、「ファイルのアップロード」をクリックし、先程ダウンロードした「OVA」ファイルを選択してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_271073c1bc3c6c8cf6de3d0bd7d3026d.png)

- 名前とフォルダの選択では、任意の名前、フォルダを指定してください。(本記事ではavi_controller)としています。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_a2c85032a155c23024c4606bcf745bad.png)

- コンピューティングリソースの選択では、ご自身の環境にあったリソースを選択してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_8f1acb7f8b0c5a90f7ffeb7f243f47ba.png)

- 詳細を確認したら次へをクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_40aeb2da11d7f605fdf04c0b47f634c0.png)

- ストレージの選択では、ご自身の環境にあったストレージを選択してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_ae3a5ead0d3456c6ef46f1c930c4b895.png)

- ネットワークの選択では、マネジメントネットワークを選択してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_89fed3153c0d4d5d71fde9fadd423a07.png)

- テンプレートのカスタマイズでは以下の項目を設定してください。
   - Management Interface IP Address: この仮想マシンに割り当てるIPアドレスを指定してください。(空欄の場合はDHCPでIPアドレスが割り当てられます)
    - Management Interface Subnet Mask: マネジメントネットワークのサブネットを指定してください。
    - Default Gateway: デフォルトゲートウェイを指定してください。

以上で基本的な設定は完了です。その他、環境に合わせてパラメータを記述してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_38d74d8c8c366e78589bdebba072be88.png)

- 設定の確認を行ったら、完了ボタンをクリックし、OVAをデプロイしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_32af16c608808d161ce42594d222eebe.png)

- OVAのデプロイが終わったら、仮想マシンを開きパワーオンしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_5071f72b1df0aeeda2fb292cf9cd868a.png)

- ブラウザから「[https://avi_controllerのIPアドレス](https://avi_controllerのIPアドレス)」にアクセスしてください。接続時に、プライバシー保護の警告が出ますが、「詳細設定」→「~にアクセスする」をクリックしてください。
※起動に時間がかかるため、アクセスが早いと「502 Bad Gateway」等が表示されます。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_cd80afcd2dc384f82807c31ee0f09be9.png)

## NSX ALBの初期セットアップ
- 初回アクセス時に管理者アカウントである「admin」のパスワードを設定します。
メールアドレスは入力しなくても構いません。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_721551b190990c4043f296e670217157.png)

- システム設定では以下の項目を設定します。
    - パスフレーズ(必須): コンフィグのエクスポートと定期バックアップで使用するパスフレーズを設定します。
    - DNSリソルバー: Avi ControllerがDNS解決するときに使用するDNSサーバを指定します。複数ある場合はカンマ区切りで指定します。
    - DNS検索ドメイン: DNSルックアップで使用するドメインを指定します。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_eb1afd49dfe4e7b8a19e72890459c032.png)

- Eメール/SMTPではEメールの送信設定を行います。必要に応じて設定してください。今回は使用しないため、「なし」を選択しています。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_17cafed6eac4c14d6af527ac3d3e8d72.png)

- マルチテナントではマルチテナントを使用しないため、デフォルトのまま進みます。以上すべての設定が終わったら、右下の「保存」をクリックしてください。これにより、NSX ALBにアクセスできるようになります。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_e18f010c4d7d5258887634667983c432.png)

- オプション: NSX ALBの言語設定。右上にあるユーザマークをクリックし、「My account」をクリックしてください。その後、「Display」のLanguageを日本語に設定し、右下の「Save」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_c284dd446baeaa8496bb06b24c4fd0e0.png)

## Default Cloudの設定
NSX ALBとvCenterを連携させるために設定を行います。

- 上部タブの「インフラストラクチャ」→「クラウド」にある「Default-Cloud」のEditボタン(ペンマーク)をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_c65ecda215371f234f565c24d9b848e7.png)

- ここでは以下の項目を設定します。
    - タイプ: 「VMware vCenter/vSphere ESX」を選択してください。※プルダウンメニューの下ボタンをクリックすると出現します。
    - テンプレートサービスエンジングループ: Default-Groupを選択してください。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_4e246b75337cd5b4630172cd8c5151ef.png)
    - 認証情報の設定: 「vCenter Server/vSphere」の項目に進み、「認証情報の設定」クリックしてください。そこで少情報の入力を求められるのでvCenter Serverに接続するための項目を入力し、「接続」をクリックしてください。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_9abd2f5033d648be38aff8c14b7370a8.png)
    認証情報を入力後、「vCenter/vSphere」項目で入力できる欄が増えます。
    - Data Center: 使用するデータセンタを指定してください。
    - コンテンツライブラリを使用: 今回は使用しないのでチェックを外します。環境に合わせてください
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_0971dde2b4e6d9042414e1a0b9c87c15.png)
ここで再起動要求されるので右下の「保存して再起動」をクリックしてください。※vCenterやESXiが再起動されるわけではありません。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_72d8f287e10f6ad1e53d117c12fce8d8.png)

- 再起動後、続けて設定を行います。以下の項目を設定してください。
    - 管理ネットワーク: 「vCenter Server/vSphere」欄にある管理ネットワークの選択で、マネジメントネットワークを選択してください。
    - 管理ネットワークのIPアドレス管理: DHCPを使用する場合は「DHCPの有効化」のチェックを入れてください。![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_87fa886a01ba156f51e6b4c4c2c7b1b7.png)
自身でIPアドレス範囲を指定する場合は「DHCPの有効化」のチェックを外し、静的IPアドレスプールにて払い出されるIPアドレスを指定してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_12ac82a2977af7f4655789aa27c09db6.png)


一度、ここでDefault-Cloudの設定は終わります。右下の「保存」をクリックしてください。

## Service Engine Groupの設定
NSX ALBではService Engineと呼ばれる仮想マシンをデプロイします。デプロイされるマシンの設定を行います。

- 「インフラストラクチャ」→「クラウドリソース」→「サービスエンジングループ」に進んでください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_06c3eafabe30c1c9a5e0da8ad9450fcc.png)

- 「Default-Group」の編集ボタン(ペンマーク)をクリックして下さい。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_c04991c0844c92adde35f56f774b891c.png)

- ここで以下の項目を設定します。
    - サービスエンジンごとのvCPU: デプロイされる仮想マシンのCPUです。CPUの性能が低い場合、1から2などに変更してください。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_9f9d18c555260f33bf1a4b12024a57f4.png)
    - 次にあるホスト/クラスタスコープサービスエンジン: 「ホスト/クラスタ」を選択してください。その後、「クラスタ」で「含む」を選択し、自身のクラスタを選択してください。「ホスト」に関しては設定しなくても問題ありませんが、任意のホストにデプロイしたい場合、ホストを指定することができます。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_3b05b63d6e573afbdbdffb4bb12efdec.png)
    以上でDefault-Groupの設定は終了です。今回の設定はあくまで一例であるため、ご自身の環境に合わせて設定してください。

## ネットワークの設定
- 「インフラストラクチャ」→「クラウドサービス」→「ネットワーク」でKubernetes用ネットワークのEditボタン(ペンマーク)をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_22bd7bfe233441f7bd6fab922de53c28.png)

- サブネットに既存のネットワークアドレスがあるのでそれのeditボタン(ペンマーク)をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_1ce8828f9421de8e0f098ad20db4e68c.png)

- 「VIPおよびSEにIPアドレスを使用」にチェックを入れ、Kubernetes用ネットワークで割り当てられる任意の範囲を指定してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_8c2db9bf4a6454f36c6961b3d9762b3f.png)


## IPAMプロファイルの設定
NSX ALBはVirtual Serviceと呼ばれる仮想的なサービスを作成し、これにIPアドレスを割り当てます。これをVIPネットワークといいます。今回はKubernetesネットワークを割り当てます。

### IPAMプロファイルの作成
- 「テンプレート」→「IPアドレス管理/DNSプロファイル」に進み「作成」の「IPアドレス管理プロファイル」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_5d1c142c6878c2adef36750e5d1ffd41.png)

- ここで以下の項目を入力してください。
    - 名前: 任意の名前を入力してください。
    - クラウド: 「Default-Cloud」を指定してください。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_02332b2ac7934315eee547356e6dfb91.png)
    - 使用可能なネットワーク: 「追加」ボタンをクリックし、ネットワークにKubernetes用ネットワークを指定してください。
    ![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_66078ab118d335571810f416794eaf85.png)
    以上で設定は終了です。右下の「保存」ボタンをクリックしてください。

### IPAMプロファイルの適用
IPAMプロファイルはDefault-Cloudに適用することで使用できます。

- 「インフラストラクチャ」→「クラウド」にある「Default-Cloud」のEditボタン(ペンマーク)をクリックしてください。

- 「IPアドレス管理/DNS」欄にあるIPアドレス管理プロファイルに先ほど作成したIPAMプロファイルを指定してください。その後、「保存」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_a5f866a17120a59774a0afcad5166042.png)

## スタティックルートの設定
VIPネットワークのルーティングを設定します。

- 「インフラストラクチャ」→「クラウドリソース」→「VRFコンテキスト」に進み「global」のEditボタン(ペンマーク)をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_545c79c8d567e701af1b602790781679.png)

- 「スタティックルート」欄の「追加」ボタンをクリックし、ゲートウェイサブネットに「0.0.0.0/0」、ネクストホップにKubernetesネットワークのデフォルトゲートウェイ(ルータ等のIP)を指定してください。その後、「保存」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_74cf8bc53cbc8726c9135e7324b6d21d.png)


## ライセンスの変更
今回はEnterpriseライセンスからEssentialsライセンスに変更します。

- 上部タブの「管理」→「ライセンス」に進み設定ボタン(歯車マーク)をクリックします。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_7118759302bd2b730d8933b24f86cea6.png)

- Essentials階層をクリックし、右下の「保存」をクリックしてください。これにより、ライセンスを変更することができました。

## コントローラ証明書の作成
TKGからNSX ALBにアクセスするために必要なコントローラ証明書を作成します。

- 上部タブの「テンプレート」→「セキュリティ」→「SSL/TLS証明書」に進んでください。「作成」をクリックし、「コントローラ証明書」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_9e9893ac2d447d249525d7dcfabaee23.png)

- 以下の項目を設定します。
    - 名前(必須): 任意の名前を入力してください。
    - 共通名(必須): 任意のFQDNを入力してください。
    - サブジェクトの別名(SAN): 共通名に入力したFQDNを再度入力してください。コントローラへIPアドレスを使用してアクセスする場合、ここにIPアドレスを指定してください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_1a13d8b1c3788ecc917cea87d2ae221e.png)
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_517434dd0c45de066e7ab60494a952c0.png)


- 作成した証明書をコントローラに適用するために上部タブの「管理」→「システム設定」→「編集」をクリックします。

- 「SSL/TLS」欄にある「SSL/TLS証明書」にある２つを削除し、先程作成した証明書に置き換え、右下の「保存」をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_fee6b8b07d896a2026493e13a92c1023.png)

- ページ更新を行うと、再度プライバシー保護警告が表示されます。「保護されていない通信」→「証明書が無効です」をクリックすると証明書の詳細を見ることができます。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_9513e46faa03edf935ccb4bf47c3a7b7.png)

## 証明書の取得
TKGからNSX ALBにアクセスするために証明書を取得する必要があります。

- 「テンプレート」→「セキュリティ」→「SSL/TLS証明書」にある作成した証明書の「エクスポート」ボタン(下矢印)をクリックしてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_a75ba09a8a5994b08db4ce499b33d7cd.png)

- 「証明書」下の「クリップボードにコピー」をクリックし、どこかにメモをしておいてください。
![](https://www.munenick.me/hackmd/uploads/upload_9851dfca3f4188f7ef22a4c3a0fd2c82.png)


これにてNSX ALBでの設定は終了です。

# 次回
次回、NSX ALBを使用したTanzu Kubernetes Gridの構築のための事前準備およびBootStrapマシンの構築になります。

https://www.munenick.me/blog/tkg-nsx-alb-02

# 参考にさせていただいたサイト
- [NSX ALB（Avi）22.1.2 の検証環境を構築。Part-01 ラボ概要 / Controller デプロイ](https://vm.gowatana.jp/entry/2022/11/27/235908)
- [Tanzu Kubernetes Grid と NSX ALB でのラボ構築。](https://vm.gowatana.jp/entry/2023/01/17/033606)
- [vSphere環境への TKG 1.4.0 with NSX-ALB の簡易展開手順](https://blogs.vmware.com/vmware-japan/2021/10/tkg-1-4-0-install.html)

MuNeNiCK.me

Tanzu Kubernetes Grid2.1とNSX ALBでKubernetes環境を構築する方法(NSX ALB構築編)

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